最近(本日2017年1月31日周辺)は、養成課程の選考や結果発表が行われている時期のようで、ブログや掲示板などに、それに関連した書き込みがよく見られます。
今回は、応援も兼ねて、養成課程の面接選考について、見ていきたいと思います。
中小企業庁の公表資料
まず養成課程に関して、中小企業庁が公表している資料に「登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル」というものがあります。これは、5章構成になっていて、章ごとにそれぞれ別のPDFファイルで中小企業庁のサイトに掲載されています。
また、上記カリキュラム部分にフォーカスしてPowerpoint資料化している中小企業大学校の、
教育機関が経済産業大臣に登録養成機関として登録を受ける際に使用する、
などの資料もあります。
養成課程の選考で問われる能力
修了生には中小企業診断士資格を付与するため、そもそも付与すべきでない人材は除外する必要がありますし、また養成機関ごとに定員もあるため、選考は必ず行われます。なお、日本マンパワーのFAQサイトに以下のように書かれていることから、定員は、中小企庁による許可制で、簡単には変えられないものだと考えられます。
Q: 定員は24名ですか。
A: 24名です。弊社の受講生数は中小企業庁より24名で許可を得ています。(日本マンパワー 「登録養成課程 よくあるご質問」)
では、どのような選考を行うのか。これについては、上述の「Ⅳ.受講生の選考要領」に詳しく書かれており、書類審査の実施と、面接試験での以下6項目の審査が定義されています。
- 書類審査
- 面接審査
- (1) 研修に対する取組み姿勢・面接対応について
- 受講動機 : 研修の趣旨を理解していること
- 協調性・コミュニケーション能力 : 面接の回答が適切であること
- 積極性・態度・表現力 : 面接時の態度が適切であること
- (2) 研修の受講に係る物理的困難性について
- 健康 : 健康面で支障がないこと
- 資金 : 合宿・生活費などの懸念がないこと
- 研修への専念度 : 全日程の参加であること
- (1) 研修に対する取組み姿勢・面接対応について
また、中小企業庁「中小企業診断士制度のQ&A集」には、選別試験については、「実施する各機関の自主性に任されており」と書かれていることから、上記要領の審査内容を包含する形で、各機関がそれぞれ必要と考える選考(グループディスカッションや筆記試験など)を追加しているものと思われます。
「健康」「資金」「研修への専念度」は、そもそも受講できる前提の確認なので、応募する時点で問題ないことが通常です。従って、重視されるのは、研修に対する取り組み・姿勢・面接対応に関わる「受講動機」「協調性・コミュニケーション能力」「積極性・態度・表現力」の3項目になります。では、この3つの項目のポイントを、一つずつ見ていきたいと思います。
受講動機
研修の趣旨を理解している必要があるため、まずは「Ⅰ.標準カリキュラム」を一通り把握しておくことが必要です。そして、それを踏まえた「受講動機」なので、以下のようなことに答えられる状態になっておかねばなりません。
- なぜ中小企業診断士になりたいのか?
- どのような中小企業診断士になりたいのか?
- それは、これまでのキャリアとどう繋がっているのか?
- なぜその養成機関を受験するのか?どこに魅力があると感じるのか?
- その養成機関に入ってから、どのような学習/研究を行っていくつもりか?
- その学習/研究を行いたい理由は何か?
「面接」においては、至極一般的な質問ではありますが、「適した答え」を準備していかないと、当日困ることになるかも知れませんので、ちゃんと準備しておきましょう。
協調性・コミュニケーション能力
養成課程の研修はチームで行われるため、その研修の効果は、各チームメンバーにかかっているといって過言ではありません。従って、チームに入って他のチームメンバーと協力して出すべき成果を出していけるかどうか、が質問への応対を通して確認されます。
コミュニケーションの問題が出やすいような障害を持っておらず、かつ普通のビジネスマナーを持って、客観的・冷静にコミュニケーションが取れる人であれば、基本的に問題ない項目だと思います。
積極性・態度・表現力
これは、実務研修で必要な能力を確認する項目だと思われます。実務研修では、実際に経営者に対して、経営診断・助言を行いますが、そこで積極的な姿勢で課題にあたり、適切な態度で経営者に接し、専門用語なども分かりやすい言葉で説明できる必要があります。
面接では、敢えて難しい問いをぶつけてきたりするのだと思います。そういった課題に対して、あきらめずに取り組む姿勢を保ち、真摯な態度で臨むこと、そして、自分のキャリアの話などでは業界用語なども出るかも知れませんが、必要に応じて分かりやすく言い換えるなどの表現力を見せられればよいのだと思います。
面接選考の形式
上述の「Ⅳ.受講生の選考要領」によると、面接員について以下のように書かれています。
面接員は、3名から構成し、その1名は登録養成機関の組織の代表者又はその他の管理職員とし、他の2名は中小企業診断士等外部専門家とし、登録養成機関の組織の代表者が指名する。
(中小企業庁 「Ⅳ.受講生の選考要領」)
養成機関の管理職と外部専門家2名の3名体制で、客観性も持たせながら多面的に評価する体制になっているようです。目の前に面接員が3人並んで座っている状況をイメージしておくといいと思います。
なお、これは養成課程の面接の話ではなく、企業の採用面接に関して聞いた話ですが、複数の面接員で面接を行う場合、よく「役割分担」を行うそうです。厳しめの質問をぶつける役、優しそうな雰囲気を出しながら温厚に問いかける役、など予め設定しておいて、その役に沿った対応をするのだそうです。それによって、厳しい質問へ対応する様子を確認しながらも、優しい役の人のイメージによって、企業のイメージの悪化を防ぐという仕組みです。そういうのもあるかも…、と思って臨むと、心に余裕ができるかも知れませんね。
面接選考の基準
同じく「Ⅳ.受講生の選考要領」によると、面接審査の評価は、以下のようになっています。
- 前掲「面接試験評価項目」の「(2)研修の受講が物理的困難」の各項目の何れかの項目において、全ての面接員が「不適性」と評価した場合は、受講を認めない。
- 前掲「面接試験評価項目」の「(2)研修の受講が物理的困難」の各項目において、面接員の評価が「不適性」ではないものの、「(1)研修に対する取組み姿勢・面接対応」の 3 項目において、何れの面接員も 1 つ以上「不適性」とし、合計 5 つ以上「不適性」とした場合は、受講を認めない。
(中小企業庁 「Ⅳ.受講生の選考要領」)
ちょっと分かりにくいので、図にしてみました。以下の図の「1」「2」いずれに条件にも該当しない場合に、合格となります。
まとめ
こうして見てみると、「当たり前」のように見える基準が多いですが、これはあくまでも最低基準として設定されたものであり、ここに各機関が独自に設定する選考基準が加わるだけでなく、定員もあります。実際、2015年度の東洋大学大学院の倍率が2.5倍であったと聞いていますし、それほど簡単なものではないようです。