私が買った中小企業診断士2次試験対策教材レビュー(4/4)

私が買った中小企業診断士2次試験対策教材レビュー(3/4)」の記事の続編です。今回は、事例Ⅳ対策本と試験委員著書について、「使ってみて、実際どうだったのか?」というホンネレビューをしていきたいと思います。

前回同様、評価は「1:不要」★☆☆☆☆ ~ 「5:必須」★★★★★ の5段階で行います。

買った教材リスト

再掲になりますが、まず買ったものはこちら。今回は事例Ⅳ対策本からになります。

では、早速レビュー!

事例Ⅳ対策本編

元々は、公認会計士試験や日商簿記1級・全経簿記上級などで出題される意思決定会計の対策として作られた本ですが、中小企業診断士試験業界でも有名で、「イケカコ」とよく呼ばれています。章立ては以下の通り12章構成です。

Lecture 1   全部原価計算と直接原価計算
Lecture 2   CVP分析(基礎)
Lecture 3   CVP分析(応用)
Lecture 4   事業部の業績評価
Lecture 5   在庫管理
Lecture 6   業務的意思決定会計
Lecture 7   活動基準原価計算(ABC)
Lecture 8   戦略的意思決定会計(1)
Lecture 9   戦略的意思決定会計(2)
Lecture 10 戦略的意思決定会計(3)
Lecture 11 原価計算の新領域
Lecture 12 不確実性と情報

大塚宗春(2001年)「意思決定会計講義ノート」税務経理協会.

中小企業診断士試験では、財務・会計科目は「アカウンティング」「ファイナンス」分野に分かれます。「アカウンティング」は、財務諸表・原価計算などの会計処理が対象で、「ファイナンス」は経営分析、意思決定会計、リスク管理・為替などが対象です。この本では、それらの中で「ファイナンス」の意思決定会計の領域を網羅しています。逆に言えば、それ以外の部分については、別途練習が必要になります。


さらに、上述のように難易度が高いので、ある程度実力をつけてからでないと、まったく歯が立たないので、他の中小企業診断士試験2次試験向け対策本をマスターしてから解くのがいいです。学習スケジュールを立てる時、このことも留意するといいでしょう。

そして、この本を使って学習を始めると、本としては177ページと薄いものの、2次本試験よりも設定も複雑で難易度が高くなっていること、受験校のテキストなどで重要論点に挙がっていないテーマもあることから、「どの章をやればいいんだろう?」と思うと思います。当然、私も思いました。

結論としては「Lecture 5 在庫管理」以外、すべてやった方がよいと思います。事例Ⅳでは、数年に1度は「サプライズ出題」があります。平成21年の営業レバレッジ(Lecture 3に経営レバレッジの表記で掲載)や、平成25年の品質原価計算(Lecture 11に掲載)などが有名なところですが、このようなサプライズに対する不安を解消するため、そして他の受験生に負けないようにするためには「関係するところはすべてマスターした」状態にしておく必要があります。そして、それを可能にするのがこの本の最大のメリットです。

もし、「そこまで時間が取れないから、頻出論点のみマスターしたい」ということであれば、「Lecture 5 在庫管理」に加え、「Lecture 7 活動基準原価計算(ABC)」「Lecture 10 戦略的意思決定会計(3)」「Lecture 11 原価計算の新領域」まで捨てる、という選択もあり得ますが、当然、サプライズ問題は捨てることになります。

なお、在庫管理も出る可能性はゼロではありませんが、どちらかというと事例Ⅲ寄りのテーマであり、事例Ⅲであれば適正在庫量を計算させるよりは、違った論述問題を優先するであろう、という判断で不要としています。当然、余裕があるならば、やっても構いませんし、公式くらいは覚えておいてもいいでしょう。

結論として、この本は、2次本試験よりも難易度の高い演習ができ、さらにサプライズ出題にも対応できる可能性を高めてくれるので、価値は大きいと思います。何より、「通常の対策問題集でカバーされない範囲をどこまでやればいいのか?」という不安に、「とりあえずこれをやっておけばOK」と応えてくれる安心感が大きいです。

私が買った中小企業診断士2次試験対策教材レビュー(1/4)」の記事で、TBCの方法論を捨てた後、事例Ⅳの対策用に買った本です。本屋で見て、経営分析の解法が「財務諸表の数値だけで、先に各指標の良否を判定しておき、与件文の情報を踏まえて、必要な指標のみ計算する」という考え方になっていたので、「これだ!」と思って購入しました。
※私が購入したのは2016年時点で売っていたものです

中身としては、本試験の過去問から、テーマごとに該当する問題を集めてきて、解説・解答を付けたものとなっています。方法論も合理的で納得できるものでしたし、テーマごとに練習したかった私の目的には沿っており、とても役に立ちました。

ただし、ちょっと誤植が目立つのは気になりました。使うときには、「誤植があるかも」と思って使うといいと思います。とはいえ、それでも計算に関わる数値に誤植があったりする時にはイラっとしますが…。

さて教材としての評価はというと、独学ならば、事例Ⅳのメイン教材にしていいと思います。これで主要テーマを一通り勉強して、意思決定会計を上述の「意思決定会計講義ノート」で練習すれば完璧だと思いますし、私もそれでA判定を取れました。

受験校を利用している場合、毎回1問解くようになっていたり、事例Ⅳ対策の講座が多めに設定されていたり、など事例Ⅳ対策が手厚くなっていることが多いので、そのようなコースを取っているならば、この本は不要となります。受験校の演習では、この本で扱われているような主要テーマは一通りカバーされますので、重複の投資はせず、受験校の教材で繰り返し学習した方がいいしょう。

試験委員著書編

長年、試験委員を務めている岩崎邦彦教授の著書で、中小企業診断士試験業界では有名な本です。小規模店がどのようにマーケティングをして戦っていくのがよいか、がとても分かりやすく書かれていて、読みやすいです。私は、テラオ屋の事例Ⅱの講座の解説の中で

事例Ⅱでは、常に根底に「スモールビジネス・マーケティング」の考え方が流れている。

と言われていたのを聞いて購入しました。確かにその通りで、事例Ⅱにおけるセオリーが多く学べる本です。

試験対策として必須かというと、正直、何とも言えません。はっきり言って、過去問分析や知識ブラッシュアップをしている中で、内容的には既にカバーされてしまうのではないかと思います。その上で、本を使って身に付けた知識を確認したい、網羅的な把握をしておきたい、というのであれば、買うのがよいと思います。

「スモールビジネス・マーケティング」と同じく岩崎邦彦教授の著書で、ブランドの作り方が学べる本です。豊富な例を用いて、小規模企業がブランディングを行っていくためのポイントが書かれています。Amazonに「スモールビジネス・マーケティング」を買った人はよく買っていますと、お勧めされたので買ってみました。

小規模企業の担当者の視点で、具体的にどうやってブランディングを進めていくか、その上で気にするべきポイントは何か、ということを示すのが目的であるため、「How」の部分が重視されています。観点が細かすぎるので、ちょっと中小企業診断士試験対策でセオリーを学ぶ本ではないかな、という印象です。個人的には買わなくて全く問題ないと思います。

ブランドに関しては、事例Ⅱでは非常に重要な概念ではありますが、過去問分析や知識ブラッシュアップをすれば、基本的に大丈夫だと思います。それでも、どうもブランドというものがイメージしづらくて苦労している、という人でしたら、買ってみるといいのかも知れません。

今回紹介した教材



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