中小企業診断士資格には、「診断業務の休止」という制度があります。
ちょっと分かりにくい仕組みなので、解説していきたいと思います。
休止の仕組みとは?
中小企業庁「中小企業診断士制度のQ&A集」によると、休止制度について、どのように申請を行うかの説明と共に、以下のように記載されています。
経済産業大臣に休止申請書を提出することにより、中小企業の経営診断の業務に従事することを休止し、休止の申請を行った日から起算して15年間を限度に登録有効期間の時間経過を一時的に休止することができます。
休止しなければ、5年間の間に知識の補充要件と実務の従事要件を満たす必要がありますが、この5年間の「時間経過を一時的に休止」できる、という仕組みです。更新の期限となる5年の間で休止すると、申請が受理されたタイミングで「時を止めることができ」ます。
図に表すと、以下のようになります。
まず資格の登録または更新のタイミングで、次の更新までの時間は5年間あります。仮に、その後、3年後に診断業務の休止手続きを取った場合、残りは2年間になりますが、この時点で時間が止まります。そして、再開した後は、初回更新までの期間はこの残期間である2年間となるのです。
さらに、再開するためには再開前の3年間の間に、知識の補充要件を5回と、実務の従事要件を15日、それぞれ満たす必要があります。休止中の身でありながら実務経験を積まなければならないという矛盾したような状況を超えて、初めて再開できるのです。
なお、再開に要した要件は、資格の更新に必要な要件に充当できるので、再開のため以外で、初回更新のために必要な要件は「実務の従事要件15日」となります。これを達成できる期間を見通して休止・再開のタイミングを決めずに、残期間が少ない状態で、要件を満たせる見込みがないまま再開すると、更新までの要件達成が間に合わずに更新できない状態に陥る可能性があるので、注意が必要です。
休止期間中の資格の状態
休止している間、「中小企業診断士」と名乗ってよいのか? 気になるところだと思いますが、中小企業庁「中小企業診断士制度のQ&A集」には以下のように書かれています。
業務再開申請可能期間中であれば、相手方に誤解を与えないよう、中小企業診断士としての経営診断の業務を休止している旨を伝えていただくことを条件に「中小企業診断士」と名乗ったり、名刺や履歴書に記載することは可能です。
「名乗ってもよいが、休止中であることを伝えなくてはダメ」だということです。面倒ですし、半分資格持っていない状態だと言っているようなものなので、むしろ名乗るのが恥ずかしいような感じになっちゃいますね。
「休止」を考えはじめたら…
「休止から復帰した診断士に会うことは極めて珍しい」と聞きます。
再開のハードルもあり、休止および再開はタイミングも気を付ける必要もあります。何より、休止中にモチベーションが低下してしまうというのもあるのでしょう。資格を活用しない生活に慣れてしまうというのもあるのでしょう。
せっかく頑張って取った資格なのであれば、休止などせずに活用していった方が望ましいですし、仮に活用できないなら独立してでも活用する、そのくらいの気概があってもいいのではないかとも思います。もし「休止」を考えるようになったら、資格を取得した時の思いを、もう一度思い出してはいかがでしょうか。