関連資格は必要か?「販売士」編

関連資格としてよくオススメされている資格「販売士(リテールマーケティング)検定」。範囲に共通性があって、学習に相乗効果が得られて、資格まで取れてしまう、と言われています。

そこで今回は「本当にそうか?」を検証すべく、販売士1級のテキストを購入して確認してみました。その結果を基に「中小企業診断士を目指している中での、販売士という資格」をどう考えるべきかについて見ていきたいと思います。

販売士試験の概要

まず、販売士の試験ですが、日本商工会議所が実施している検定試験で、主に流通・小売業界をターゲットに「販売のプロ」を認定しており、1級・2級・3級の3段階のレベルが設定されています。商工会議所の販売士試験サイトの情報によると、以下のように各級の人材像と身に付く知識が定義されていますが、どの級も受験資格はありませんので、最初から1級や2級を受験することもできます。

人材像 身に付く知識
3級 販売員 接客マナーや販売技術といった接客業務に関する知識
2級 売場の管理者クラス 従業員の育成や指導、仕入・在庫の管理といった店舗管理の知識
1級 店長・経営者クラス トップマネジメント全般に関する商品計画や商品予算の策定、 マーケティング政策の立案、人事・労務・財務管理といった知識

合格率は以下のように、1級はなかなかハードルが高いですが、2級・3級は出題形式がすべて選択肢問題であるということもあり、合格率が高くなっています。

  • 1級(37-43回 平均): 20.63%    ※ 出題形式は、選択肢問題と論述問題が半々
  • 2級(38-78回 平均): 51.93%    ※ 出題形式は、選択肢問題のみ
  • 3級(65-78回 平均): 57.29%    ※ 出題形式は、選択肢問題のみ

試験の日程は、1級は年1回、2級・3級は年2回となっています。一般の会社員が受験を考えた場合、1級は受験日が平日のみであることが難点です。

  • 1級    : 年1回 (2月 第3水曜日)
  • 2級・3級: 年2回 (2月 第3水曜日、7月 第2土曜日)

販売士試験と中小企業診断士試験の対応関係

販売士検定に関係する中小企業診断士試験科目は、1次試験では「運営管理」を中心に、「企業経営理論」や「財務・会計」が該当します。さらに、2次試験でも「事例Ⅱ」に加え、「事例Ⅰ」、一部「事例Ⅳ」にも関係してきます。

そして、中小企業診断士試験の出題範囲を意識した場合、関連する販売士試験はどの級か、については「主に1級および2級」となります。2級では、小売・流通業界特有の知識が求められる問題も一定程度出題されますが、1級で求められる知識は、ほぼ中小企業診断士試験の出題範囲でカバーされます。もちろん教材では、販売士の方がより専門的な細かい内容まで踏み込んでいますが、試験ではそこまでは問われないため、試験で必要な知識としてはカバーされる、ということです。

販売士試験は、店長・経営者クラスを想定しているため、人事管理や組織管理など「企業経営理論」の範囲の内容や、経営指標や財務分析など「財務・会計」範囲の内容も含まれていたりはしますが、他は店舗の運営・管理やマーケティングなど「運営管理」で必要となる範囲で構成されており、学習して無駄になる部分はほとんどありません。中小企業診断士試験の試験範囲に、販売士試験(特に1級)は包含されていると言っていいでしょう。

しかも、販売士1級試験では、半分が論述問題です。中小企業診断士2次試験とは異なり、知識を論述するだけの単純な論述問題ですが、選択肢問題とは違い、正確な知識を持ち、かつそれを文章化する能力が必要となります。

中小企業診断士試験では、2次試験向けの能力を身に付けていく際、知識を定着するステップが必要となりますが、この知識定着化段階で行う練習と同様の対策が必要となるのが、販売士1級試験です。

販売士1級試験学習のメリット

ここで改めて、中小企業診断士受験生の販売士1級試験学習のメリットを考えてみましょう。

同じ販売士試験でも、2級・3級は合格率の高い、学生も受験することのある試験だそうなので、専門性のアピールにはなりません。しかし、1級は難易度の高い試験として、小売・流通業界での認知度も高いため、コンサルタントとしてのブランディングに有効な資格であると考えられます。

さらに、中小企業診断士として独立した場合、営業先の一つとなるのが「商工会議所」です。販売士試験は商工会議所の資格であるため、その中の難関資格を保有しているというのは、連携上のメリットにつながる可能性があるかも知れません。

また、中小企業基盤整備機構が運営する中小企業への情報発信サイト「J-Net21」で、定期的に中小企業診断士の統計データを発信している「データで見る中小企業診断士」という企画の最新版「データで見る中小企業診断士2016」の「中小企業診断士以外の保有資格」というデータによると、「なし」を除けば、3位に販売士資格がランクインしています。

中小企業診断士の保有資格構成比グラフ

他に載っている資格よりは必要な対策の時間が少ない、という理由もあるかも知れませんが、実際の中小企業診断士の保有が多いということは、中小企業診断士としての活動の中でのメリットも期待できるということなのかも知れません。

まとめ

販売士1級試験の学習内容は、中小企業診断士試験の範囲に包含されるため、学習に無駄は発生せず、2次試験向けの学習の中の、知識定着化プロセスでの勉強と同様の練習ができます。ただし、中小企業診断士2次試験向けにはそれだけでは不足であるため、その後、さらに学習が必要となりますが、途中までの達成度の計測にはなるでしょう。

また、1級であれば、資格自体も小売・流通業界で一定のステータスがあり、商工会議所に対するアピールにもつながります。

よって、2月の第3水曜日に受験でき、かつそのタイミングで2次試験に向けた知識の定着化を行っている受験生にとっては、活用するとよい試験だと言えます。

主に2次試験に失敗して、翌年に再チャレンジする人が対象になると思いますが、受験してみることをオススメします。



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