関連資格としてよくオススメされている資格「ITパスポート」。範囲に共通性があって、学習に相乗効果が得られて、資格まで取れてしまう、と言われています。
そこで今回は「本当にそうか?」を検証すべく、実際にITパスポートのテキストを見て確認してみました。その結果を基に「中小企業診断士を目指している中での、ITパスポートという資格」をどう考えるべきかについて見ていきたいと思います。
ITパスポートの関連科目
まず、情報システムに関わる分野は、1次試験で「経営情報システム」だけでなく「運営管理」の科目に含まれています。しかも、「運営管理」でも意外と重要な分野となっているのです。生産情報システムの設問は頻出ですし、アローダイヤグラムによるクリティカルパスの作業時間計算など、どちらの科目でも出題される可能性がある問題もあります。
さらに2次試験でも、事例Ⅲで情報システムの活用に関する設問が出題されることも多く、「情報システム」というものに対して、一定の理解があることが求められます。
ITパスポートと中小企業診断士試験の対応関係
私がITパスポート試験のテキストを一通り確認したところ、ほぼ全体的に、中小企業診断士試験の出題範囲であることが分かりました。
ITパスポート試験は、企業のビジネス部門の担当者も受験生として想定しているため、「経営に情報システムをどう活かすか」という観点が入っており、そのため一部、「企業経営理論」の範囲の内容が含まれていたりはしますが、他は「経営情報システム」「運営管理」で必要となる範囲で構成されており、学習して無駄になる部分はほとんどありません。中小企業診断士試験の試験範囲に、ITパスポート試験は包含されていると言っていいでしょう。
しかし、ITパスポートの学習内容だけで中小企業診断士試験に合格できるほど、「経営情報システム」は簡単ではないため、ITパスポートの学習後、さらに中小企業診断士試験の対策も必要にはなります。
ITパスポート学習のメリット
ここで改めて、中小企業診断士受験生のITパスポート学習のメリットを考えてみましょう。
ITパスポート自体は、初心者向けの科目であるため、専門性のアピールにはなりませんし、会社から取得を求められるとしても、入社1~2年目くらいの新人であることが多いと思われるので、中小企業診断士試験の受験者層とは異なるため、メリットになることは少ないでしょう。
では、どのような場合に、メリットが生まれるのか。
それは、ビジネス部門の業務ばかりを担当してきて、情報システムがどのように作られているかというような「画面に見える情報システムの裏側」に疎く、「経営情報システム」科目を苦手としている受験生が、基礎の学習をする場合だと思います。
ITパスポート試験は初心者向けの試験なので、テキストも図などがふんだんに使われていて分かりやすく、解説も丁寧です。中小企業診断士試験のテキストよりはストイックで無機質な印象はないので、教材として取っつきやすいのではないかと思います。
従って、基礎の学習教材にITパスポート試験の教材を使う、というのは有効だと思います。しかし、受験は必要ありません。初心者向け資格であり、資格自体に魅力はないため自己満足にしかならず、基本的に受験料の無駄になります。
まとめ
ITパスポート試験の学習内容は、中小企業診断士試験の範囲に包含されるため、学習に無駄は発生しないものの、それだけでは不足であるため、その後、中小企業診断士試験向けの学習も必要となります。
また、資格自体にステータスはなく、活用できない資格であるため、わざわざ受験して取得するメリットはありません。
よって、あえて受験する必要はないです。あくまでも、苦手にしている人が基礎から分かりやすく学習したい場合に教材を活用する、というのがベストです。