注目されている資格「中小企業診断士」
去年2016年1月12日の日本経済新聞記事「ビジネスパーソンを対象とした新たに取得したい資格
普通のビジネスマンをターゲットにしやすい資格として資格学校の目玉商品にされ、様々なキャッチコピーがつけられました。
- 唯一の経営コンサルタントの国家資格
- 経営に関わる幅広い知識が身に付き、仕事の幅が広がる
- 就職・転職に有利になり、独立もできる
しかし、本当に多くの人が目指すべき資格なのでしょうか?
中小企業診断士を目指すべきでない人とは?
資格学校の積極的な宣伝の効果もあって、それなりに知名度も高まりました。ただ、その結果として、本来不要な人たちも多く受験するようになってしまったのです。次のような条件にあてはまる人たちです。
- 大企業や大きめの中規模企業に勤務している
- 中小企業に転職したいという考えはなく、独立の具体的予定もない
- スキルアップしたいと思っていて、勉強がその手段だと考えている
- 勉強したら、その結果を資格や学歴として残したい
- 経営コンサルタントという響きに憧れを感じる
- MBAは仕事と両立できないけど、試験だけで取れるならいいかも、と思う
もし、あなたがそうであるならば、即刻断念すべきです。
1次試験で身に付く幅広い知識は多くのビジネスマンに共通して、ある程度有益だと思いますが、「中小企業経営・政策」のように中小企業向け施策に関係のない仕事をしている人にはまったく無関係の科目もあります。さらに2次試験は、中小企業向けコンサルティングのセオリーを問う試験であり、しかも競争試験(約900人しか合格しない)です。受けた年の試験との相性や運の要素も大きいので、人によってはスルッと受かる人もいますが、平均的には、労力に対する効果は低いのです。
※理由は「データで見る中小企業診断士2次試験」の記事をご参照ください。
では、中小企業診断士を目指すべき人とは?
逆に、資格を取るべきなのは、次のような人たちです。
- 中小企業向けのコンサルティング会社(船井総研、タナベ経営など)に勤めている、またはそういった中小企業向けのコンサルティング会社に転職したい
- 中小企業の支援機関や、中小企業に融資を行う金融機関などに勤務している
- 中小企業の経営に携わっている、または経営に近い立場で働いている
- 中小企業向けのコンサルタントとして独立したい
中小企業を相手にしたビジネスをする人か、中小企業の経営に関わる人でないと、身に付けた知識を活かせないので、もったいない結果になってしまうのです。
大手コンサルティングファームは中小企業診断士をどう見るか?
自己啓発に積極的で、コンサルタントに憧れを感じる人は、総合系コンサルティングファームなどに興味がある人も多いのではないでしょうか。
そういった人たちが聞きたいかも知れない「総合系コンサルティングファームが中小企業診断士資格をどう評価するか?」という問いに答えると、はっきり言って、「ほとんど評価されません」。MBAの方がよっぽど評価が高いです。
MBA持ちの採用候補者の選考書類を見た場合:「ほぅ…!」
中小企業診断士持ちの採用候補者の選考書類を見た場合:「ふーん」
…という感じです。大手コンサルティングファームでマネージャーとして採用活動も行っていた私が言うので、間違いありません。
「日本版MBA」とか「転職に有利」とか言われているので不思議に感じるかも知れませんが、それぞれの目的と取得方法、総合系コンサルティングファームのコンサルタントが求められる役割を合わせて考えれば、分かってもらえると思います。
まずMBAですが、次のような特徴があります。
- 大企業の事例も多く扱う
- ケースのディスカッションが中心
- 自分の問題意識を基に、積極的に研究を行い、修士論文として結論を出す
一方、中小企業診断士は、
- 中小企業の事例のみ
- 4択/5択の一次試験・論述の二次試験で、ほぼ筆記試験のみで取得可能
- 試験に合格するための(決まった範囲の)勉強が中心になる
そして、総合系コンサルティングファームが求めるのは、下記のような「自分で動ける・切り拓ける」人材なので、求める人材イメージとしては、圧倒的にMBA取得者の方が近いのです。また、MBAでも夜間のMBAは同様ですが、「仕事ができる人は普通は忙しい。片手間で難しい資格を取ったりできる程度にしか仕事を任されない人だったのかな」と疑われたりもします。
- 大企業のよくある課題を理解していて、状況に応じた対処ができる人
- 会議やその他日常のコミュニケーションで、論理的かつ的確な発言ができる人
- 洗い出してある問題を解決するのではなく、何が問題かを洗い出しに動く人
- 人間関係や仕事を進めやすい環境など、「場」を作り上げられる人
- 自ファームのビジネスに関連性の高い分野で専門性を持つ人
当然、個人差が大きいことは理解しているので、「分からないから面接で判断して…」となることも多いです。20代~30歳くらいまでであれば、書類選考は多少通りやすくなる可能性はありますが、基本的には気にされません。まぁその程度です。
資格の登録、維持・更新の負担
試験に合格すれば、それで終わりではありません。むしろそこからが始まりです。合格後に現れる大きな負担があるのです。それは、資格の登録や維持・更新にかかる負担です。以下の2つの記事に詳しく書きましたので、こちらもぜひご参照ください。
「知られざる実務補習という名の最終選別」
「中小企業診断士資格の維持・更新」
それでも中小企業診断士を目指す方へ
もはや止める理由はありません。ぜひ一緒に頑張っていきましょう!
私も情報提供という形で協力していきたいと思います!!