2次試験の基本情報
中小企業診断士試験の最大の難関が2次試験です。
科目は以下の4科目です。事例Ⅰ~Ⅲは、最近の傾向では1事例あたり1問100文字~160文字程度で4~5問、合計500~600文字程度の論述試験です。事例Ⅳは、財務数値や事例文章を分析する論述と意思決定会計の計算問題が、3:7あるいは4:6くらいの割合で出題されます。
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ(組織・人事)
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ(マーケティング・流通)
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ(生産・技術)
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅳ(財務・会計)
特徴としては、
- 1次試験を突破した人だけが受けられるので受験者のレベルはかなり高い
- 論述できるレベルの正確な知識と、事例を読み解く正確な分析力、妥当性の高い助言ができる能力が求められる
- 採点基準や模範解答が公表されないため、採点から合否判定まで全てがブラックボックス
- 合格基準は、「40点以下の科目がなく、かつ全体の平均が60点以上」とされているが、(例外を除けば)合格率は20%で安定、という実質的な競争試験
ここまでは、他サイトなどにも載っている基本情報です。
受験者数や合格率は?
ここから、中小企業診断協会の発表する統計データをグラフ化して見ていきます。
データ:過去の試験結果・統計資料、平成28年度第2次試験統計資料
※「データで見る中小企業診断士1次試験」の記事と見比べてみる発見があるかもです。
受験者数
1次試験の難易度によって通過者数が変わるので受験者数は上下しますが平均は4,586人で、近年は5,000人弱ということが多いようです。
再受験者数
全受験者数から、1次試験合格者数を差し引くと、1次試験免除組の人数が算出されます。平均は1,756人ですが、1,300~2,400人まで分布範囲は広いです。
1次試験の合格は翌年度まで有効なので、2年目は1次試験を受験せず2次試験を受験できる、という制度を利用して2次試験を受けた層です。何年かけてでも合格を目指す人の中には、免除の権利を持ちながらあえて1次試験を受けて、さらに翌年まで2次試験受験資格を確保しておくことを狙う「保険受験」をする人たちもいます。
当たり前ですが、1次試験免除組は、1次試験合格者数の多い年の翌年に増えます。グラフを見比べると明らかですね。
再受験者率
再受験者率も、再受験者数と同じ傾向を示しています。
一般的に勉強時間は「1次試験突破組<1次試験免除組」でしょうから、それが合格率と相関するならば、再受験者率の高い年は厳しい年と言えるでしょう。
平成28年は1次試験合格者数が最低であったため、平成29年は2次試験の再受験者率が最低水準になることが予想されるのでチャンスです!!
合格者数
平成24年と平成26年が約1,200人と異常に突出していますが、それを除けば800~900人程度という極めて狭い範囲で分布しています。平均すると934人、平成24・26年以外の平均は873人です。合格基準が絶対基準である1次試験とはまったく違った傾向と言っていいでしょう。
なお、「筆記通過者数」としているのは、正確には2次試験には筆記試験合格後の口述試験も含まれ、両方とも突破した人が合格となるためです。
合格率
合格率も、合格者数と同じ傾向を示しています。平成24年・26年が異常値で25%程度、それ以外は18~20%の範囲に収まっています。平成21年が低くなっていますが、これは受験者数が最も多かった年であった割に合格者数がさほど多くなかったためです。このことから、合格率ではなく、合格者数を目安として合格者が決まっていることが分かりますね。
通常時は900人程度合格させ、特例時は1,200人程度合格させる、という目安なのでしょう。二次試験後には実務補習があり、そこでは現役の診断士の指導を受けながら実際に企業の診断を行うのですが、指導できる診断士の数や実務補習に応じる企業数が制約なのかも知れませんが、いずれにせよ、合格者数が一定になるよう、採点時に調整されていることは明らかです。
では、特例はどのような場合に発生するのでしょうか。それは、中小企業診断士登録者数の推移をみると見えてくるものがあります。
中小企業診断士登録者数
データ:中小企業施策総覧、中小企業診断士の現状について(平成20年)
「中小企業施策総覧」には毎年、「第Ⅱ部 個別中小企業施策 第1編 経営サポート 第9章(近辺) 雇用・人材支援 第2節 人材育成等 1 中小企業診断士の試験・登録制度」の中にその年の中小企業診断士登録者数が掲載されています。Webでは平成21年までしか掲載されていないので、平成20年は図書館の書籍で参照し、平成19年以前は「中小企業診断士の現状について」の数値を使ってグラフ化しました。
ここで、特徴的なのが、平成20年~22年にかけて登録者数が減少していること、そして、平成24年は1,220人もの合格者を出しながら、登録者数の増加は1,066人にとどまることです。平成26年も、例年より300人も多く合格者を出しているのに関わらず増加数は前後の年より若干少ない程度です。おそらく、事前に登録者数の減少は把握できるのでしょう。平成22年の登録者数の統計データが出て「減ってしまった、マズい」という中、さらなる減少は避けるべく、減少が見込まれた年に特例措置が取られた…、そんなところではないかと推測しています。
なお、平成23年に関しては、合格者は790人であるにも関わらず、1,982人も登録者が増加しています。平成22年までの減少を受け、中小企業大学校などの登録養成課程の定員を増やすなどしたということでしょうか。「中小企業診断士の現状について」の資料から、平成20年時に登録養成課程の定員が合計で280人であったことがわかりますが、それを900人も増やすことが可能なのか、不可能だとすると他に増やす方法があるのか、は謎ですが、この年は試験合格者を増やす措置は取られなかったということだけは言えますね。
1次試験と2次試験のデータを合わせて見てみると…
「データで見る中小企業診断士1次試験」の記事では、再受験者数が年々増加している傾向が示されていました。2次試験の受験資格は、1次合格の年と翌年しかないため、多年度受験生の数は把握できませんが、2次試験では通常時900人しか合格しませんので、その不合格者も1次試験と同様、一定の割合で再チャレンジにまわっていると予想されます。1次試験の受験者数の増加傾向は止まっているので、全受験生に占める受験経験者の割合は、年々高まっていっていると推測できます。
そして、これは1次試験だけの傾向であるとは考えにくいため、2次試験も同様に、1次試験を複数回突破して受験している層も含めた受験経験者の割合は、増えていっていると考えられます。そうであるならば、2次試験は、900人の人数制約で滞留している多くの受験経験者に、少しの新規受験者が加わって構成される戦場だということになります。その中からまた900人が選抜されることになり、届かなかった受験生は滞留して翌年に臨む。それが繰り返されていくため、競争環境は年々厳しくなっていっている、と言えるでしょう。
まとめ
2次試験は、1次試験を突破した人が受けられる、採点基準の分からない論述試験であり、年々レベルが高くなっていく受験者の中で、一定数だけが合格できる競争試験です。そして、競争相手の数やレベルは前年とその年の1次試験の難易度に左右され、さらに、まれに合格者枠が広がったりもします。
1次試験と違って、自分の達成度によって合格が決まるのではなく、自分の力の及ばない周囲の状況によっても結果が変わってくる、非常に不条理な試験です。
弱点をなくすのはもちろんですが、知識を高め、練習を重ねてセオリーを身に付け、それでもその年の状況によって左右されてしまうことを覚悟の上、辛抱強く挑むことが重要です。