中小企業診断士2次試験の学習戦略

データで見る中小企業診断士2次試験」の記事では、基本情報と統計データを分析し、登録者数という裏側の影響要素まで見てみました。今回は、その内容受けて、学習戦略について説明していきたいと思います。

2次試験対策のゴール

2次試験を受ける時にどのような状態になっていればよいか? 私は2016年10月時点で、事例Ⅳ以外はどれももう一息到達できませんでしたが、その後、足りなかったことを分析し、さらに、いくつもの受験校の講座説明会に足を運んで講師達の発言に耳を傾け、質問をぶつけた結果、「どういう状態になっていれば合格できるレベルなのか」を把握することができました。

全体共通と、事例Ⅰ~Ⅲ、事例Ⅳで分けますが、イメージとしては、下記をすべて満たした状態が「合格できるレベル」になります。

全体共通

  • 事例ごとのタイムスケジュール(試験開始後に最初にやること、1問当たりの使用時間など、試験時間である80分の使い方)が決めてある
  • 自分のやりがちな間違い・ミスの傾向を把握しており、迷った場合の対処策が決めてあるだけでなく、自分の経験や思い込みに囚われない冷静さと客観性を持っている

事例Ⅰ~Ⅲ

  • 事例ごとの特徴や構成、出題パターンをよく理解した結果、「結局、毎年問われていることは変わらない」と感じる境地に達していて、試験場で問題を見ても「ほら、やっぱりね」と思える
  • 与件文や問題文を読むと、問われていることに対して必要な知識やセオリー、使える定番文章、書く文章の型、まとめるのに使う切り口が、溢れるように思い浮かぶ
  • 問題文と与件文から論理的な類推ができ、それによって思い浮かんだ知識の中から使うべき知識がどれかが識別できる
  • 過去問や模擬試験などで必ず時間内に解き終われるスピードがある

事例Ⅳ

  • 事例Ⅳの全知識&全ノウハウ」の内容を一通り理解しており、どの問題でも解ける
  • 過去問や模擬試験などで必ず時間内に解き終われるスピードがあり、かつ初見であっても安定的に合格点が取れる

ゴールの姿に到達するには?

ゴールが見えて、自分のやってきたこと・それによる達成度が分かれば、必然的に「何をやったのがよかったか」「何がよくなかったのか」、そして「何をやればよかったのか」が分かります。それをまとめてみます。

事例Ⅰ~Ⅲ

  • 知識を使いこなせる状態への進化
    • 各事例の頻出の論点について、反射的に特徴やメリット・デメリットを、端的かつ必要十分な情報を書き出せるように練習を積む
  • 過去問の徹底的な分析
    • 過去問(最低5年分)を何度も繰り返し分析して、「本質的に何が問われているのか」「設問文・与件文に書いてある情報に込められた出題者の意図はそれぞれ何か」「事例企業の今後の戦略は何か、それはどのように達成されるのか、進めるうえでの課題は何か、それはどのように解決されるのか、そしてこれらの問いはそれぞれどの設問にどう対応するのか」「解答すべき内容をどのようなロジックで導出するのか、それは実現可能か、具体性はどのように確保するか」、等々、検討に検討を重ねて、「出題者が求めていることがはっきり見えるようになった(=開眼した)」状態になる
  • 解く型の確立
    • 演習を重ねることで、読み・考え・書きの型を確立し、それを80分でこなすための時間の使い方を体に浸透させる

事例Ⅳ

必要な学習時間は?

私は、まず勉強の仕方で失敗してしまったのが大きかったです。内容については後述しますが、そのロスを自分に合った演習に振り向けられていれば、というのが悔やまれます。同時に、その時分かっていなかった、本来やるべきことの量としておそらく100時間くらいは下記に積み増したであろうから、私にとって必要な学習時間の合計としては、500時間くらいだったと思われます。

学習内容と学習時間

かけた時間としては、合計で400時間くらいでした。今から振り返った時の反省としては、「書けるレベル」「反射的に知識が溢れ出すレベル」まで知識を高める訓練と、過去問の徹底的な分析が足りていませんでした。

そして試験の結果は?
  • 事例Ⅰ:B
  • 事例Ⅱ:B
  • 事例Ⅲ:B
  • 事例Ⅳ:A

事例Ⅳは、時間をかけただけあって、通信添削でも後半は安定的に合格点が出るようになっていました。しかし事例Ⅰ~Ⅲは6回の添削のうちそれぞれ1回しかAは取れず、たまにCがあったりもしましたが、Bで返ってくることが多かったです。

実は、受講していた際は、通信添削の採点には懐疑的な部分もあったのですが、終わってみると正しかった、そして本試験も、通信添削で判定されていたのと同様で、実力通りの結果であったと言えるのでしょう。

筆者の陥った失敗とは?

失敗は、大きく分けて2つあります。

  1. 最初に選んだ受験校の解法アプローチが合わず、合うものを求めて1か月半さまよった
  2. 得点戦略を誤り、事例Ⅳを重視しすぎた

まず1.について。主に事例Ⅰ~Ⅲの話です。
1次試験が終わり、自己採点で合格を確信した私は、2次試験対策を始めようとしました。1次対策でTBCの教材がよかったので、その流れで自然と2次対策もTBCのテキストと講義動画を使って学習を始めました。2週間くらいで大体、方法論が理解でき、3週目くらいから通信添削講座を使って実践に移そうと試しましたが、どうしてもできませんでした。方法論については「私が買った中小企業診断士2次試験対策教材レビュー(1/4)」に詳細を書きましたが、解説を見ればなるほどとは思うものの、思考プロセスが抽象的に感じ、私には合わなかったのか、最初から自分でそれを再現することができなかったのです。

そこで、1次試験終了後4週目にして、また他の方法論を探しはじめました。インターネットで色々な受験校のサイトを見たところ、AASは解法テキストのみを販売しているので、購入してみました(2016年版)。方法論は非常に分かりやすく、思考プロセスやその論拠も明確で、これなら再現できそうだと感じたものの、テキストの中で1問だけ方向性の納得できない解答が載っていたのです。その頃、並行して経験談を読んだりして「ふぞろいな答案分析」「ふぞろいな合格答案」で合格者の再現答案から学ぶのがよいということを知ったので、購入して解答を比較してみました。その結果、合格者たちの解答は、私の考えと方向性が一致していることが確認できました。

そして、AASにも疑念が芽生えてしまったので、さらに別のところを探し始めたのが5週目。2次試験まであと1か月+1週間です。そのタイミングから始められる講座なんて、ほとんどない中、教材だけ購入でき、無料レポートも納得できる内容だったテラオ屋で、「最短合格戦略の型」講座をまず購入してみました。方法論もAASをベースにしているようで納得感があり、どの解答もそれに至る考え方もまったく違和感がなかったので、追加で事例Ⅰ~Ⅲの講座を購入、そして、テラオ屋の解法をベースにしようと決めたのが、6週目が終わった頃でした。

この紆余曲折の過程で、「人によって合う方法論は異なる」というのを学んだのですが、そのことをもっと早く認識できていればよかった、というのが今になって思うことですね…。

なお、私はTBCやAASを選びませんでしたが、決して良くないというわけではないです。合うか合わないか、という尺度で選ばなかっただけです。MMC・KECなども含め、説明会などで受講生の合格率を聞いてみても、どこも同じくらいであることが、受験校によって大きな差はないことを証明しています。

そして2.について。
まず学習の過程で私は、「2次試験の点数は、事例ごとの点数が合計されて合否判定される」と思っていました。(ここで「えっ?」と思われる方は、まず「得点開示請求して分かった中小企業診断士2次試験の得点の秘密」の記事をお読みください)

事例Ⅳは、解答が数値であることが多い「得点の見える」科目であることから、まずここで確実に取って、他を引っ張り上げればよいと思いました。そして、得点戦略として、事例Ⅰ~Ⅲは55点、事例Ⅳで80点取ることを考え、事例Ⅳを重視した対策を取ることにしたのです。

しかし、先述の記事で述べたように、実態として2次試験の「合否判定得点」は「偏差値」をベースとしたものでした。

その時は、分かっていなかったんです。80点は≒偏差値80で、それを取るということが、どれだけ難しいことか。毎年、難易度が変動する中、特に簡単な年だった場合は余計に高い偏差値は出しくくなるので、事例Ⅳのみに頼るのはどれだけリスキーなことだったか。それに比べたら事例Ⅰ~Ⅲを底上げする方に労力を使った方がどれだけ効果的だったか。

…今だから分かることではありますが、完全な戦略ミスでした。

学習のポイント

まず、受験校によって方法論が異なること、そしてどれが合うかは人によって異なることを知るのが最初の一歩です。

これを知ったら、早い段階で各受験校の方法論に触れてみましょう。そして、「その考え方に納得でき、試験まで心酔してやっていけるか」「その解き方を自分で再現できそうか」これら尺度で判定して、合うものを早めに見つけましょう。1次試験対策中に気分転換として触れてみて、1次試験学習の4分の3くらいまで進んだあたりで、どの方法論で2次試験に挑むかが決められているようなスケジュールがよいのではないかと思います。

得点戦略としては、「合否判定得点」が「偏差値」ベースであることを考えると、やはり「最弱点科目」を強化し続けるのが、最も労力対効果が高いことは間違いありません。自分の実力の把握をしながら、その時点で一番「苦手」「点数が安定しない」事例を最優先として補強し続けていく、という進め方で挑みましょう。



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