2次試験の得点に関する議論
検索して他サイトを調べるとわかりますが、2次試験の得点については、「相対評価」か「絶対評価」か、という議論があります。「相対評価」の論拠は、「データで見る中小企業診断士2次試験」の記事で私が分析しているのと同様、例年合格率が20%程度であることです。一方、「絶対評価」の論拠は、得点開示請求をすると、定義されている合格基準に沿った結果が帰ってくることです。
「一体どのように得点が決まっているのか?」この長年の議論に、私が終止符を打ちます!
得点開示結果を見て感じた違和感
本日2017年1月11日、請求していた得点開示の回答が届きました。それを見て感じた違和感から、説明していきたいと思います。
まず前提として2次試験の事例についてですが、2次試験では事例はⅠ~Ⅳまで4つあります。そして、この中で一つだけ、得点が予想できる事例がありますよね。事例Ⅳです。なぜなら、多くの解答が数字になるからです。数字が合っていれば該当箇所で減点なく確実に点数がきます。私は、この唯一点数の予想できる事例Ⅳを得点源として、他の科目の不足分を補う戦略で臨みました。
そして自己採点の結果、予想得点は70点台だったんです。80点到達の可能性まであると予想していました。
しかし、今日返ってきた得点開示請求の結果は、60そこそこ。……アレ?
ここで、「そういえば今回の事例Ⅳって簡単だったな…」と思い出し、ピーンと来ました。
2次試験の得点について再整理
ここで、2次試験の得点について整理してみましょう。
- 合格者数は多くの年で900人程度に揃っており、合格率も大体20%程度
- 得点開示請求すると、その結果は定義された合格基準に従っている
- 開示された得点を他サイトで調べた結果、20~80の範囲に収まることが多い模様
- 「できた」と思っても点が低い場合、「ダメだった」と思っても良い場合がある
これらの条件を全て満たすのは…………?
偏差値という魔法
そう、偏差値です。偏差値を調整したものを点数としているんです。そう考えれば、すべての条件を満たすことができますし、すべての事象に説明がつきます。
そして、合格率を検証するため、正規分布の場合のパーセンテージを見てみると…、
- 母集団全体に対する、偏差値60以上の集団の割合:15.8%
- 母集団全体に対する、偏差値59以上の集団の割合:18.4%
- 母集団全体に対する、偏差値58以上の集団の割合:21.1%
偏差値59近辺に、例年の2次試験合格率に近いパーセンテージがあることが分かります。これはもう、間違いありませんね。
では、具体的にどのように点数をつけているのかを想像してみましょう。どうやって点数を付けているのか、その手順を考えてみると、おそらく、以下のような手順になるのではないか、と思います。とーっても簡単にできますね。
- 全受験者の点数を「素点」として算出
- 「素点」を基に、全受験者に事例ごとに「偏差値」を設定
- 設定された「偏差値」を、「合否判定得点」として仮設定
- 事例ごとの「合否判定得点」が40未満を含む受験者を除外
- 上位からカウントしていき、900人程度になる合否ボーダーラインを決定
- 端数を処理し、合否ボーダーラインと240点(60点×4事例)の差を算出
- 6で算出された差を、事例別と合計で矛盾が起こらないように事例別に分配
- 4で除外された以外の全受験者に、7を加算/減算(減算で40を下回ったら40点と扱う)
- 8の計算結果を「合否判定得点」として確定
- 開示請求があった場合、9で確定された「合否判定得点」を回答
この方法であれば、900人から1,200人に合格者を増やしたい年も作業は同じ、簡単です。
なお、まれに開示結果で80点を超えた点数が出ていることがあるようですが、もしかすると、「9の合否判定得点の合計が240点以上(合格者)で、個別事例の偏差値及び素点が共に75(80かも)以上で、さらに素点>偏差値である場合は、素点をその事例の合否判定得点とする」というような処理を、9の後に行っているのかも知れません。そうすれば、全体への影響なく、80以上の点数がほとんど出ない不自然さを隠蔽できますので。
改めて2次試験の合格基準を見直してみると…
さて、もう一度、確認してみましょう。2次試験(筆記試験)の合格基準は、以下の通りです。
筆記試験における総点数の 60% 以上で、かつ、1科目でも満点の 40% 未満がなく、(後略)
中小企業診断協会 「試験に関するよくある質問(FAQ)」
気づきますね。「総点数の60%以上」と言っていますが、これが「素点の合計が」だとは一言も言っていません。実は、これが偏差値を調整することによって算出された「合否判定得点の合計が」であった!というのが、2次試験の得点のカラクリです。
2次試験で科目合格制や科目免除制を採用できない理由
公認会計士試験も、税理士試験も、科目合格制を取っています。なのに、中小企業診断士2次試験で科目合格制がありません。なぜなのか、理由を考えてみたことはありますか?
さらに、科目免除制もありません。公認会計士も税理士も、事例Ⅳを免除されたりできません。なぜなのか、理由を考えてみたことはありますか?
中小企業診断士試験の目的は、試験案内に
中小企業診断士となるのに必要な応用能力を有するかどうか判定することを目的とし、(以下略)
中小企業診断協会 「平成28年度中小企業診断士 第2次試験案内・申込書」
と書かれています。いずれかの科目で、一度「必要な応用能力を有する」と判定されたのなら、1年くらいその結果を持ち越せてもいいではありませんか。それにも関わらず、まったく持ち越せない。既に国家的に能力を保証されていても、一科目たりとも免除されない。不思議ですね。
実は、これもヒントだったのです。科目合格制を「採用しない」のではなく、「採用できない」のです。科目合格制を考えた時の例として、以下のケースを考えてみてください。
科目合格制を採用していたとして、今年の受験者が10人いたとします。その中で5人が前年に2科目ずつ合格、3人が前年に1科目合格しました。Aさんは事例Ⅰ・Ⅱ、Bさんは事例Ⅰ・Ⅲ、Cさんは事例Ⅱ・Ⅲ、Dさんは事例Ⅱ・Ⅳ、Eさんは事例Ⅰ・Ⅳに合格済みです。Fさんは事例Ⅰ、Gさんは事例Ⅱ、Hさんは事例Ⅳに合格済みです。IさんとJさんは今年初受験です。
このような状況下において「公平な尺度を保ちながら、2名だけ合格させたい」といった場合、どうやりますか?できますか? …無理ですね。
「絶対基準」であるならば、科目合格制の採用は可能ですが、合格数の制御ができません。
「相対基準」であるならば、全体比較ができなくなるため科目合格制の採用ができません。
だから、科目合格制は「採用できない」んです。「論理的には、科目合格制であってもいいはずなのに、採用されない」。こういったことからも、裏側が垣間見えますね。
この話、本日2017年1月11日時点で、どのサイトにも載っていない、どの受験校も唱えていない(※)、完全な私オリジナルの新説です。もし他でもこの説が見られるようになったら、きっとそれは、私のこの記事を見て書いたものでしょう(笑)
※TAC・MMC・AAS・KEC・SLAの説明会、およびTBC・テラオ屋の通信講座、の範囲内で