「中小企業診断士2次試験の学習戦略」の記事では、2次試験受験時にどのような状態になっていればよいか、またそこに達するために必要な学習時間、学習の進め方のポイントについて説明しました。今回は、学習で使う教材について説明します。
最初に知っておくべきこと
まず2次試験は、以下の特徴があります。
- 試験の模範解答が公表されない
- どういう答案の、どういう部分に、どのような判断基準で加点されるか、公表されない
だから、「どの受験校の解答も間違っている可能性がある」ことをよく知ったうえで各教材を使っていく必要があります。特に、過去問については、1つの受験校の解答だけでなく、最初から「複数の解答を」見比べるべき、と捉えておきましょう。多くの解答を見比べて、「どれが最も点が取れそうなのか」「自分のベスト答案を作るとすると、どうなるか」を自分で考えながら学習するのがいいでしょう。
私は最初、1つのテキストから始めたため、納得できない解答や、特殊な思考を経由しないと到達できない解答が載っていたときは、かなり戸惑いました。後述する「ふぞろいシリーズ」を購入した後で、「あれらの解答は、点になるかどうか分からないリスクの高い解答」であったと判断できるようになりました。このあたりについては分かった状態で学習を始められた方がいいと思います。
ズバリ、どの教材が良いか?
2次試験の対策としては、以下3種類の学習を行う必要がありますので、この括りで考えたいと思います。
- 試験対策のベース学習
- 過去問の分析
- 補足するサブ教材による学習
では、順に見ていきます。
試験対策のベース学習
ベース学習では、「知識を使いこなせる状態への進化」と「解く型の確立」を目的とします。2次に必要な論点についての論述演習を行って知識を高めつつ、それを前提に問題演習と添削によってブラッシュアップしながら自分の解法として定着させていきます。
この対策としては、基本的に受験校を使うのがいいでしょう。どの受験校もそうですが、知識定着・過去問分析・演習を十分に得られるパッケージになっていますし、添削を受ける機会も十分得られ、質問できる相手もできます。
学習開始時期や予算にもよりますが、例えば遅くとも12月末迄に翌年の2次試験の準備を開始する決断ができており、受験仲間が作りたい、講師と直接のコミュニケーションがとりたい、などの思いがあって、20~30万円の出費が許容できるのならば、通学講座がいいでしょう。
予算的に厳しい、という人は通信講座になり、こちらは5~10万円の予算となります。内容的には通学講座とあまり変わりませんが、講義は動画での受講になり、仲間も作りにくいです。
もっと予算を抑えるとなると、テキストを購入しての独学になりますが、添削が受けられないという弱点があります。自分だけではどうしても客観的に見られないので、添削を受ける通信講座分は必要経費ととらえた方がよいのではないかと思います。
いずれにせよ、何より重要なのは「自分に合った方法論を持った受験校の教材であること」、あとは「知識を使いこなせる状態に高められること」、「解く型を確立できること」です。
過去問の分析
過去問の分析には、「ふぞろいシリーズ」が必須です。受験校によっては、過去問をメインで扱うところもありますが、そうであったとしても、ランクごとの答案例や統計的に合格者の答案を分析した時の共通点など、学ぶものは多いので、ぜひ読んでみましょう。
- ふぞろいシリーズ
このシリーズには「合格答案」「答案分析」「再現答案」の3種類があります。「合格答案」は、1年分の試験について「答案分析」と「再現答案」の両方が載っています。2018年対策としては、11が発売されると思うので、これを買うことになるかと思います。「答案分析」には、ふぞろいプロジェクトが集めた再現答案を分析し、どのようなキーワードで点数が入っているのかを分析して、傾向分析や模範解答が載っていますので、2016年と2017年が載っている「ふぞろいな答案分析4」までは最低限あった方がよいのではないかと思います。
なお「再現答案」は、合格者の体験談と再現答案が載っているものです。どうしても「答案分析」が手に入らなければ買ってもいいですが、優先順位は低いです。個人的には買う必要はなかったと感じています。
合格者の話や、受験校の講師の話を聞いていると、合格レベルに達した人は、以下のような経験をするそうです。
- 「毎年、問われていることは同じ」と感じるようになる
- 急に「出題者の求めていることがクリアに見える」と感じるようになる瞬間がある
そこは、過去問分析を繰り返すことで到達できる世界だということなので、最重要作業として取り組みましょう!
補足するサブ教材による学習
サブ教材の候補はいくつか考えられますが、事例Ⅳ対策として名高い定番「意思決定会計講義ノート」、これだけでいいと思います。
- 事例Ⅳ対策本
問題の複雑さは本試験より高いのでより厳しい練習になりますし、過去に「サプライズ出題」と言われた出題についても、この教材をやっておけば対応できるものでした。出題範囲が分からない事例Ⅳですが、「この教材をやっておけば大丈夫」と安心できる教材です。これをやって解けないものは、受験生ほぼ全員ができないと思っていいです。
内容についての論述問題として出題されるケースもあるので、使い方としては、計算ができるだけでなく、「書いて説明ができるようになること」も意識した練習をしましょう。
まとめ
まずは、受験校を活用した試験対策のベース学習を行うところから始めて、ある程度、慣れてきたら過去問へチャレンジして、解いたら徹底的に分析・ベスト解答の検討を繰返し、それと並行してサブ教材による実力強化も図っていく。そんな進め方がいいと思います。
ただし受験校だけは、本当に相性が重要なので、慎重に選びましょうね!
今回取り上げた教材は、こちらです。